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元東大教員が語るブログと論文の違い

私は学生時代の2008年から東大教員時代の2019年まで合計12年の研究歴があり,主著や共著を含めて80本以上の論文執筆の経験があります.

2020年7月から私はブロガーとして活動した結果,ブログと論文は類似点が非常に多いことがわかりました.

そこで,元東大教員の経験を踏まえて,ブログ執筆と論文執筆の違いを語ります.教員や研究員としての論文執筆の経験をブログ執筆に活用したい方はおすすめです.

Blog
ブログ「元東大教員/アメリカのスタートアップCTO」.
Publication
私が主著の国際会議ICESS 2019 の招待論文.

ブログと論文の違い

まずは,ブログと論文の違いを構成の観点で比較してみましょう!

論文の執筆経験が無い方にもわかりやすく紹介します.

ブログの構成

私のブログ執筆は,主に以下のポイントを重視し,ここに肉付けしていきます.

  1. ペルソナ(想定読者)はどういう人でどういう課題(悩み)があるのか?
  2. なぜ提案したい内容は課題をペルソナの課題を解決できるのか?
  3. ペルソナの課題を解決できる理由を説明する(主に定性的な評価だが,定量的も評価もありうる).

大事なポイントはペルソナ(想定読者)に対して,導入文で自分に関係ある課題であることを説明し,その課題を解決できることを説明することです.

論文の構成

私の論文執筆は,主に以下のポイントを重視し,ここに肉付けしていきます.

  1. ペルソナ(私の場合はコンピュータサイエンスの研究者)が理解できる社会的課題なのか?
  2. なぜ関連研究(既存の研究手法)では課題を解決できないのか?
  3. なぜ提案手法では課題を解決できるのか?
  4. なぜ提案手法で解決できる理由を説明する(定性的や定量的に評価).

大事なポイントは論文のペルソナ(私の場合はコンピュータサイエンスの専門家)に対して,冗長なことを書かずに本質的なことをきちんと伝えられるかですね.

具体的には,専門家に対して教科書レベルの内容は既知なので,論文には書きません.

私の経験上,論文は社会的課題を解決するということが建前で,本音はペルソナ(≒査読者)が興味のある課題(悩み)を解決するという傾向が強いですね.

すなわち,ペルソナが興味のない内容だと社会的に意義があるかどうかに関係なくReject(採録拒否)になりやすい傾向でした...

ブログと論文の構成の違い

私が考えるブログと論文の構成の大きな違いは,「2. なぜ関連研究(既存の研究手法)では課題を解決できないのか?」をしっかり述べないことですね.

正直,ブログで関連研究を書くと本題に入るまでの前置きが長くなり,読むのが面倒くさくなって離脱する可能性が高いからだと思います.

論文は論理的な文章なので説得力を上げるためには必要ですが,ブログは論理的な文章というより読者に役に立つ文章なので,本質的に必要なことをわかりやすく書くことが重要ですね.

私がブログを書く時には気をつけています.

他の項目の比較

項目ブログ論文
レビュー読者からの書き込み.arXiv(査読無しオープンアクセスの論文)は読者から主にEメールで連絡
査読付きの国際会議や論文誌は査読者からの書き込み.
投稿から公開までの時間即時.種類に依存する.
arXivは科学的信憑性を確かめる審査があり,1~2日程度
・ 国際会議は6ヶ月程度.
・ 論文誌は1年程度.
更新即時可能.種類に依存する.
・ arXivは科学的信憑性を確かめる審査(1~2日)後に可能
・ 国際会議や論文誌は不可.正誤表を自分のWebページに記載する等で対処.重大な間違いがあると論文撤回もありうる.
まとめ記事(サーベイ論文)グーグルの検索結果の上位に載りやすいので,みんな書きたがるが,競合が激しい.(暗黙的に)その研究分野の第一人者(大御所)ではないと書くことを許されない.ある意味,第一人者になるための戦いと言える.
成果収入(アフィリエイトやEC販売,Google AdSense等)やPV.採択(arXiv以外)やダウンロード数.
引用記事のURLをWeb/SNSでシェア.論文の参考文献.
著作権自分のサイトは自分のもの.
ブログサービスは使う場合はサービス元になることが多い.
arXivは自分のもの.arXiv以外は,掲載先(例:IEEE XploreACM Digital Library)に著作権を渡す.
オリジナリティ他人のコピペはダメ.自分のコピペはOK(合法)だが,ブログの質が低下するので避けたほうが良い.他人だけでなく自分のコピペもダメ.査読もあるため,ブログよりもオリジナルの文章が厳しく問われる.査読者は,iThenticateでコピペをチェックする.
評価の再現性基本的に追求されない.追求される.再現できないと論文撤回もありうる.
文章会話調で書く.文法が多少くずれてもOK.キャッチコピーやセールスライティングのよに字足らずで,読者の想像を刺激したり共感させる書き方が良い.文語調で書く.文法が正確でないと減点.事実をありのままに淡々と書く.対象とする専門家が共感するように,興味をそそる書き方が良い.

ブログと論文を比較して見ると結構似ていますね.特に,ブログとarXivは非常に似ていることがわかります.

まとめ

ブログはビジネス版のarXiv(査読無しオープンアクセスの論文)で,成果は収入です!

最近のコンピュータサイエンスの論文は査読を経てから掲載するのは非常に研究のサイクルが遅く時代遅れになります.

なので,arXivの論文を引用して新しい研究テーマを進めるのが一般的になりつつあります.

例えば,私が共著の国際会議ITSC 2018の論文の参考文献7, 9, 12, 13, 20はarXivの論文から引用しています.

他にはグーグルが開発した機械学習のライブラリTensorFlow(国際会議OSDI 2016)の論文の参考文献はarXivの論文からたくさん引用しています.

本記事でブログと論文の違いが理解できれば幸いです.

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