C言語でPOSIXのメッセージキューの使い方を教えて!
こういった悩みにお答えします.
本記事の信頼性
- リアルタイムシステムの研究歴12年.
- 東大教員の時に,英語でOS(Linuxカーネル)の授業.
- 2012年9月~2013年8月にアメリカのノースカロライナ大学チャペルヒル校(UNC)コンピュータサイエンス学部で客員研究員として勤務.C言語でリアルタイムLinuxの研究開発.
- プログラミング歴15年以上,習得している言語: C/C++,Python,Solidity/Vyper,Java,Ruby,Go,Rust,D,HTML/CSS/JS/PHP,MATLAB,Assembler (x64,ARM).
- 東大教員の時に,C++言語で開発した「LLVMコンパイラの拡張」,C言語で開発した独自のリアルタイムOS「Mcube Kernel」をGitHubにオープンソースとして公開.
- 2020年1月~現在はアメリカのノースカロライナ州チャペルヒルにあるGuarantee Happiness LLCのCTOとしてECサイト開発やWeb/SNSマーケティングの業務.2022年6月~現在はアメリカのノースカロライナ州チャペルヒルにあるJapanese Tar Heel, Inc.のCEO兼CTO.
- 最近は自然言語処理AIとイーサリアムに関する有益な情報発信に従事.
- (AI全般を含む)自然言語処理AIの論文の日本語訳や,AIチャットボット(ChatGPT,Auto-GPT,Gemini(旧Bard)など)の記事を50本以上執筆.アメリカのサンフランシスコ(広義のシリコンバレー)の会社でプロンプトエンジニア・マネージャー・Quality Assurance(QA)の業務委託の経験あり.
- (スマートコントラクトのプログラミングを含む)イーサリアムや仮想通貨全般の記事を200本以上執筆.イギリスのロンドンの会社で仮想通貨の英語の記事を日本語に翻訳する業務委託の経験あり.
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目次
【C言語】POSIXのメッセージキュー
POSIXのメッセージキューとは,プロセス間でメッセージの形でのデータのやり取りを行うことができる仕組みです.
POSIXのメッセージキューのAPIは,古いメッセージキューであるSystem V メッセージキューのAPIとは異なりますが,同様の機能を提供します.
メッセージキューの設定は以下のようになります.
- msg_default:新規キューのmq_maxmsg設定に使用される値
- msg_max:一つのキューに入れられるメッセージの最大数の上限値
- msgsize_default:新規キューの mq_msgsize設定に使用される値
- msgsize_max:メッセージの最大サイズの上限値
- queues_max:作成可能なメッセージキュー数のシステム全体での上限値
メッセージキューの設定値は,以下のファイルを見るとわかります.
※参考までに,私の環境では以下になりました.
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$ cat /proc/sys/fs/mqueue/msg_default 10 $ cat /proc/sys/fs/mqueue/msg_max 10 $ cat /proc/sys/fs/mqueue/msgsize_default 8192 $ cat /proc/sys/fs/mqueue/msgsize_max 8192 $ cat /proc/sys/fs/mqueue/queues_max 256 |
mq_open関数
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mqd_t mq_open(const char *name, int oflag); mqd_t mq_open(const char *name, int oflag, mode_t mode, struct mq_attr *attr); |
mq_open関数は,新しいPOSIXメッセージキューを作成するか,既存のキューをオープンします.
キューはnameで識別されます(詳細はこちら).
oflagの設定はこちらを読みましょう.
modeはキューのパーミッションを設定します.
mq_attr構造体は以下になります.
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struct mq_attr { long mq_flags; /* Flags (ignored for mq_open()) */ long mq_maxmsg; /* Max. # of messages on queue */ long mq_msgsize; /* Max. message size (bytes) */ long mq_curmsgs; /* # of messages currently in queue (ignored for mq_open()) */ }; |
mq_open関数の返り値は,メッセージキュー記述子 (message queue descriptor) になります.
mq_send関数
1 2 |
int mq_send(mqd_t mqdes, const char *msg_ptr, size_t msg_len, unsigned int msg_prio); |
mq_send関数は,メッセージキュー記述子mqdesで参照されるメッセージキューにmsg_ptrが指すメッセージを追加します.
msg_len引数は,msg_ptrが指すメッセージの長さを示します.
この長さはキューのmq_msgsize属性以下でなければなりません.
mq_receive関数
1 2 |
ssize_t mq_receive(mqd_t mqdes, char *msg_ptr, size_t msg_len, unsigned int *msg_prio); |
mq_receive関数は,メッセージキュー記述子mqdesで参照されるメッセージキューから最も高い優先度を持つ最も古いメッセージを削除し,そのメッセージをmsg_ptrが指すバッファーに格納します.
msg_len引数は,msg_ptrが指すバッファの大きさを示します.
この値はキューのmq_msgsize属性以上でなければなりません.
msg_prioがNULL以外の場合,msg_prioが指すバッファに受信したメッセージの優先度が格納されます.
mq_close関数
1 |
int mq_close(mqd_t mqdes); |
mq_close関数は,メッセージキュー記述子(message queue descriptor)mqdesをクローズします.
POSIXのメッセージキューの使い方
POSIXのメッセージキューの使い方は以下になります.
mqueue.cはMQ_NAME2に書き込んだ後にMQ_NAMEから読み込みます.
これに対して,mqueue2.cはMQ_NAME2から読み込んだ後にMQ_NAMEに書き込みます.
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/* * Author: Hiroyuki Chishiro * License: 2-Clause BSD */ #include <stdio.h> #include <stdlib.h> #include <string.h> #include <stdbool.h> #include <fcntl.h> #include <sys/stat.h> #include <mqueue.h> #define MQ_NAME "/mqueue" #define MQ_NAME2 "/mqueue2" #define MSGSIZE 1024 #define MODE 0666 int main(void) { mqd_t mqd; char str[MSGSIZE], str2[MSGSIZE]; struct mq_attr attr = { .mq_flags = 0, .mq_maxmsg = 10, .mq_msgsize = 8192, .mq_curmsgs = 0 }; while (true) { if ((mqd = mq_open(MQ_NAME2, O_CREAT | O_WRONLY, MODE, &attr)) == -1) { perror("mq_open"); exit(1); } if (fgets(str2, sizeof(str2), stdin) == NULL) { fprintf(stderr, "Error: cannot success fgets()\n"); exit(2); } str2[strlen(str2) - 1] = '\0'; if (mq_send(mqd, str2, strlen(str2) + 1, 0) == -1) { perror("mq_send"); exit(3); } if (mq_close(mqd) == -1) { perror("mq_close"); exit(4); } if ((mqd = mq_open(MQ_NAME, O_CREAT | O_RDONLY, MODE, &attr)) == -1) { perror("mq_open"); exit(5); } if (mq_receive(mqd, str, sizeof(str), NULL) == -1) { perror("mq_receive"); exit(6); } printf("str = %s\n", str); if (mq_close(mqd) == -1) { perror("mq_close"); exit(7); } } return 0; } |
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/* * Author: Hiroyuki Chishiro * License: 2-Clause BSD */ #include <stdio.h> #include <stdlib.h> #include <string.h> #include <stdbool.h> #include <fcntl.h> #include <sys/stat.h> #include <mqueue.h> #define MQ_NAME "/mqueue" #define MQ_NAME2 "/mqueue2" #define MSGSIZE 1024 #define MODE 0666 int main(void) { mqd_t mqd; char str[MSGSIZE], str2[MSGSIZE]; struct mq_attr attr = { .mq_flags = 0, .mq_maxmsg = 10, .mq_msgsize = 8192, .mq_curmsgs = 0 }; while (true) { if ((mqd = mq_open(MQ_NAME2, O_CREAT | O_RDONLY, MODE, &attr)) == -1) { perror("mq_open"); exit(1); } if (mq_receive(mqd, str, sizeof(str), NULL) == -1) { perror("mq_receive"); exit(2); } if (mq_close(mqd) == -1) { perror("mq_close"); exit(3); } printf("str = %s\n", str); if ((mqd = mq_open(MQ_NAME, O_CREAT | O_WRONLY, MODE, &attr)) == -1) { perror("mq_open"); exit(4); } if (fgets(str2, sizeof(str2), stdin) == NULL) { fprintf(stderr, "Error: cannot success fgets()\n"); exit(5); } str2[strlen(str2) - 1] = '\0'; if (mq_send(mqd, str2, strlen(str2) + 1, 0) == -1) { perror("mq_send"); exit(6); } if (mq_close(mqd) == -1) { perror("mq_close"); exit(7); } } return 0; } |
2つの端末でそれぞれのコードをコンパイルして実行して下さい.
1 2 |
$ gcc mqueue.c $ a.out |
1 2 |
$ gcc mqueue2.c $ a.out |
まず,mqueue.cの実行ファイルから「abc」と改行コードを入力すると,mqueue2.cの端末に「str = abc」と表示されます.
次に,mqueue2.cの実行ファイルから「def」と改行コードを入力すると,mqueue.cの端末に「str = def」と表示されます.
つまり,mqueue.cの端末は以下のように表示されます.
1 2 |
abc str = def |
また,mqueue2.cの端末は以下のように表示されます.
1 2 |
str = abc def |
まとめ
C言語でPOSIXのメッセージキューの使い方を紹介しました.
メッセージキューでプロセス間通信の方法がわかりました.
C言語を独学で習得することは難しいです.
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